子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果に関する研究(2017年受賞)

    子供たちの疲労度に関する実験から、木質内装に抗疲労効果があることが明らかとなりました。

    掲載情報の概要

    子どもの疲労という社会問題の解決に寄与するため、抗疲労空間の研究を行いました。検証は木質内装空間と非木質の空間を用意し、その中で子ども達に作業を行ってもらい、作業前後の疲労度を計測する手法をとり、その結果、自律神経機能や認知機能に対して影響が見られ、木質内装に抗疲労効果があることを実証しました。

    研究背景

    子どもたちがとても疲れている、そのような実態をご存知でしょうか。大阪市の約5.300 名の小中学生を対象にした疲労の実態調査(2016年)では、小学 4 年生から 6年生の 30%、中学生の 46%が 1 ヶ月以上続く疲労状態にあり、子どもの疲労は深刻な状況となっています。
    子どもの疲労は睡眠の乱れが大きく関係するため、十分な睡眠時間の確保など、生活習慣の是正が疲労回復・予防にとって重要です。さらにプラスして、子ども向けの抗疲労ソリューション(家電、食品や環境、空間など)を開発することも子どもの健康増進につながりますが、当時、この領域での研究は行われていませんでした。

    研究概要

    積水ハウスでは2009年から大阪市立大学医学部(元・大阪公立大学)と抗疲労効果のあるリビングの研究を行っていました。そこでは大人が帰宅後や休日にゆっくり休む自然が豊かな空間を開発しましたが、子どもたちにとって良い抗疲労ソリューションとしては、家で勉強に励んでも疲れにくい空間をターゲットとしました。
    研究では、木質内装空間(床、壁2面、天井、テーブルを木質材料で仕上げた部屋)と白色内装空間(全て白色の材料で仕上げた部屋)のそれぞれの部屋で精神的疲労を感じる課題を行ってもらい、その前後に自律神経機能と注意制御機能を指標とする疲労度を測定し、子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果を検討しました。

    研究結果

    結果として、木質内装空間においてのみ、疲労負荷後の副交感神経の活動が亢進し木質内装空間は疲労回復効果が高いことが示唆されました。さらに、木質内装空間は白色内装空間に比べ疲労により低下しやすい注意の抑制機能のパフォーマンス(課題の正答率)低下を抑える効果が認められました。これは、注意の抑制時に活性化する前頭前野の機能が維持されている効果を示唆しています。これらの結果から木質内装空間は子どもの疲労を和らげる空間であることがわかりました。

    その後

    この研究デザインを活用した子どもたちのための研究開発は、その後、大阪公立大学を中心に様々な分野で行われることとなりました。積水ハウスでも、子どもたちの短時間の勉強や宿題に最適な「「立って勉強できるカウンター」の研究なども行い、お客様にご提案しています。今後も様々な分野で、子どもの抗疲労に関わる研究開発が進むことを期待しています。

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    水野敬ら、子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果,、日本疲労学会誌 第11巻 第1号 2015年6月、p. 86(第11回日本疲労学会学術集会ポスター発表) https://j-fatigue.jp/
    論文元/参考文献2
    積水ハウスニュースレター(2017年10月26日) https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/26/20171026.pdf
    JWDA記事編集者
    積水ハウス株式会社(大阪府)/大阪公立大学(大阪府)
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