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木材は視覚的に心理的な印象と生理面に影響することが分かってきました

    木材は視覚的に心理的な印象に影響するとともに、心拍などの生理面に影響することが明らかになりつつあります。

    掲載情報の概要

    木材の外観は、一般に「木材色」、「木目模様」、「光沢」で特徴づけられます。
    木材を内装に用いた部屋では、視覚的効果で「あたたかい」「自然な」印象を与えるだけでなく、血圧、心拍などの生理応答にも影響を及ぼすことが実証されています。

    出典/科学的データによる木材・木造建築物のQ&A

    生理応答や快適感などに影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。

    [検証1 木材率が生理応答や快適感に影響を]

    木材率 (全内装面に占める木 材の面積比率) が自律神経系の生理応答や快適感などに影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。
    広さや調度品が同じで木材率の異なる部屋(左写真) において、血圧、心拍、 脳血液動態などの生理応答の測定および部屋の主観評価が行われました。
    その結果、木材率が45%の部屋では心拍数が有意に増加し、木材率が90%の部屋では収縮期血圧が有意に低下しました。しかし、木材率が0%の部屋では、これらの生理応答に変化は見られませんでした。

    内装デザイン-1/ (木材率を変えた内装)
    出典 / Tsunetsugu, Y., et al.: J. Wood Sci., 53, 11-16 (2007)

    [検証2: 梁・柱の視覚刺激で心拍数が増加し覚醒効果が ]

    天井・壁の、造作の梁や柱の 配し方が異なる部屋 (右写真) において心拍の測定を行い、覚醒効果があるのかを検証した実験があります。
    その実験では、標準の部屋 (Standard)と比べて、梁や柱を配した部屋 (Designed)は、梁や柱の視覚刺激で心拍数が増加していることが分かりま (下図)。
    そのことから、内装に木製の梁や柱を付加することで、覚醒効果があるといえます。

    心拍数の変化 * p=0.03
    出典 / Tsunetsugu, Y., et al.: J. Physiol., Anthrop., 21, 297-300 (2002)

    内装デザイン-2/
    (造作の柱・梁を変えた内装)
    出典 / Tsunetsugu, Y., et al.: J. Physiol.Anthrop., 21, 297-300 (2002)

    木材率による木材内装の印象評価

    木材率と心理的効果の調査で は、木材率の増加とともに、「あたたかい」あるいは「自然な」印象が上昇することが確かめら れています。これは木材率の異なる室内写 真を見せ、その印象をアンケー トしたものです。その結果、木材率が「なごんだ」 「あたたかい」「自然な」などのイメージに影響があることが確認されました。ただし、木材率が高いほど「なごむ」「あたたかい」という印象が強くなるというわけではありません。木材の色合い (色相)や明度とも深い関係があるため、塗装などの仕上げには配慮が必要です。

    木材率と 「あたたかい」 「自然な」 印象との関係
    出典/高橋徹ほか編 「木材科学講座 5 環境(第2版)」, 海青社、p.66 (200

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    林野庁「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」(Q3 P8-P9) https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf
    論文元/参考文献2
    「室内空間における木材率とイメージ」, 増田 稔、山本尚美,京都大学農学部演習林報告, 60, 285-298(1988) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/191899/1/frk_060_285.pdf
    論文元/参考文献3
    「室内空間における木材率とイメージ (第2報)」, 増田 稔 仲村匡司、京都大学農学部演習林報告, 62, 297-303(1990) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/191958/1/frk_062_297.pdf
    JWDA公開日
    2017年3月30日