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木材が衝撃に対して示す特徴 

    木材は衝撃力が加わると、塑性や弾性の変形で衝撃エネルギーが消費されるため、衝撃力を緩和する効果がある材料といえます。

    掲載情報の概要

    木材は多孔質の組織構造で、衝撃力が加わると組織がつぶれたり、たわんでまたもとに戻ったりします。これらの性質を塑性あるいは弾性といいます。
    この性質により、 衝撃エネルギーは消費され、 跳ね返ってくる力は衝撃力より弱くなります。つまり、木材は衝撃力を緩和する効果があるといえます。

    木造床の構法によって、木材の衝撃緩和効果が変わります。

    建物の木造床では、衝撃緩和効果は床板の樹種や厚さ、下地の材料 、床組の工法によって異なります。これを検証するため、特別養護老人ホームを対象 としてアンケー卜調査が行われました。それによると、床板の下に根太・二重床・その他を施工した「直貼り以外」の床では、転倒や転落による骨折事故が、床板をコンクリー卜の上に「直貼り」した場合の約2/3に減っています(下左図)。これは、根太組の床にすると、衝撃力が加わって床がたわみ、さらに衝撃が緩和されるためと考えられます。

    衝撃緩和効果は、木造でもRC造でも、二重床や根太組のほうが高い

    実際の高齢者施設において、建物の構造・床組の工法・仕上材による衝撃緩和効果の違いを比較検証した実験があります。この実験では、JIS A 6519「体育館用鋼製床下地構成材」に定められている転倒時の頭部ヘの衝撃を模した「床の硬さ試験」方法を用いており、体育館等の衝突加速度(G)の基準値である100Gを目安としています。                          

    まず、RC造直貼りの床(120- 140G)では体育館等の基準値 (100G)を満たさず、衝撃緩和効果の最も高い小規模木造の高齢者施設( 60-90G)と大きな差があることが分かります。また、RC造でも二重床や根太組工法を採用した床は、小規模木造の高齢者施設に近い値となります。さらに、RC造直貼り床の表面にクッションフロアなどの柔らかい素材を敷いた場合、一定程度の軽減効果は得られるものの、根太組や二重床工法を採用した施設の床ほどの改善は見られないことが分かります。以上のことから、木造施設の場合や、RC造でも二重床や根太組とした場合は衝撃緩和効果が高いことが分かります。

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    林野庁「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」(Q8 P16-P17) https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf
    論文元/参考文献2
    「特別養護老人ホームの床が転倒・転落骨折に及ぼす影響」三浦 研, 2014 年 79 巻 698 号 p. 883-890 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/79/698/79_883/_article/-char/ja/
    JWDA公開日
    2017年3月30日