木材に含まれる揮発性成分(匂い成分)の特性について
木材の含有成分、特に揮発性成分の組成と量は樹種により違います。また、揮発量は製材過程の乾燥方法や季節により変化します。
木材の含有成分、特に揮発性成分に関する情報は、木材の耐久性や匂いなどの特性を評価する指標となっています。木材の含有成分、特に揮発性成分の組成と量は樹種により違います。また、揮発量は製材過程の乾燥方法や季節により変化します。また、木材の揮発性成分の発散量は温度によって変化し、夏期の方が冬期に比べて高くなることが分かっています。
乾燥処理により木材に含まれる成分は変化します。
乾燥温度が最高120℃となる高温乾燥により、スギ心材に含まれるテルペン類は、天然乾燥に比べ減少すること、特にセスキテルペン類のエピクベボール Epicubebolとクベボール Cubebolは消失してしまうことが報告されています(下表)。
一方で、高温乾燥後のテルペン類の含有量は、赤心材では材の端部が中央部よりも多く、黒心材では材の中央部が端部よりも多かったとされています。
木材の含有成分は、部位や心材色によって含有量が異なるため、こうした様々な要因を考慮した上で、さらに乾燥処理による影響を評価することが重要だと考えられます。
季節(温度変化)により木材の揮発性成分の発散量は変化します。
杉材を内装に用いた室内における木材の揮発性成分(匂い成分)の濃度は、温度によって変化し、夏期の方が冬期に比べて高くなります(下図)。
夏期は温度が高く、低温である冬期に対し、物質の蒸気圧が上昇するため、夏期の揮発量が高くなると考えられます。
したがって、木材を内装材として使用した空間では、季節(温度)変化により感じる匂いの強さが変化すると考えられます。
木材の揮発性成分の樹種による違い
人は、木材に含有される成分のうち揮発する成分を匂いとして感じています。
この揮発性成分の組成およびその量比は樹種により異なり、この成分の差異が、スギ、ヒノキやマツといった樹種のにおいの特性となります。
さらに成分が異なるため、抗菌や防虫、耐久性の効果は、樹種により異なります。
時間経過による国材揮発性成分の室内検出量の変化
木材の匂い成分は住宅の築年数を経てもある程度は持続するといわれています。
スギ、ヒノキを内装材として使用した室内空間で日常的な使用状態で4年が経過しても、室内空気中には木材由来のテルペン系化合物が数多く検出されることが報告されています。
室内の木材由来の揮発性成分を複数年にわたり分析した報告例は少ないため、より長期的な分析や揮発性成分の組成の変化といった詳細な計測が必要となっています。
掲載情報の詳細
- 論文元/参考文献1
- 「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」 林野庁(Q13, P28-29) https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf
- 論文元/参考文献2
- Yatagai,M.:Terpenes of Leaf Oils From Conifers.,Biochemical Systematics and Ecology,14,469-478(1986)
- 論文元/参考文献4
- 「木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適性増進効果の解明」独立行政法人森林総合研究所:, 森林総合研究所交付金プロジェクト研究成果集、5,9-27(2005) https://www.ffpri.affrc.go.jp/koukaijouhou/kouprohyouka/h15/kihatsusei.html
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