#18

木材には人の目を引き付ける性質があることが分かってきました

    木材の表面で光が複雑に反射して生まれる特有の照り(光沢)が、私たちの目線を引き付けるのです。

    掲載情報の概要

    木材の表面には、無数の微細な溝が隙間なく並んでいます。
    溝に当たった光は、鏡のように一様ではなく複雑に反射されるので、ギラッキの少ないまろやかな光沢を生み出します。

    概要

     木材の表面には、無数の微細な溝が隙間なく並んでいます。
    溝に当たった光は、鏡のように一様ではなく複雑に反射されるので、ギラッキの少ないまろやかな光沢を生み出します。
     木材の表面で光が複雑に反射して生まれる特有の照り(光沢)が、私たちの目線を引き付けるのです。

    真上から照明されたヒノキ材(左)を顕微鏡で拡大(右)
    白い部分が光をよく反射している。

    「照りの移動」は本物の木材ならではの意匠です。

     樹種によっては、材面を傾けながら、あるいは、照明の向きを変えながら観察すると、明るく、照り(光沢)のある部位が動いて見える「照りの移動」が現れることがあります。
     左図のトチノキやカエデによく見られる波状杢は、「照りの移動」を生じる木目の代表格です。
     この柄を精巧に再現した印刷シートでもなかなか再現できない「照りの移動」(右図)は、本物の木材ならではの意匠といえます。

    照明の角度変化による照りの移動(トチノキの例)
    印刷シート(上)と本物のカエデ材(下)の照りの比較

    「照りの移動」に人の目が引き付けられます。

     モノやコトが人目を引き付ける度合いを「誘目性」といい、それは見る人の注意や関心の向き加減に影響します。
     木材には、高い誘目性があることが明らかにされています。「波状杢柄を精巧に模した印刷シート」と「本当の波状杢が現れたカエデ材」を、照明の方位を変えながら連続撮影して動画化し、この動画を見た被験者の視線がどこに停留するかの検証を行いました(下図)。
     照りの移動が生じないシートでは、停留点の分布がほとんど変わりませんが、カエデ材は縞模様の明暗の出現位置に合わせて停留点が移動しており、高い誘目性が示されています。

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    林野庁 科学的データによる木材・木造建築物のQ&A https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf
    論文元/参考文献2
    「ヴァイオリン杢の光反射特性と誘目性の関係」加藤茉里子, 仲村匡司, 木材学会誌, 2016 年 62 巻 6 号 p. 284-292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwrs/62/6/62_284/_pdf/-char/ja
    JWDA記事編集者
    編集•発行 木構造振興株式会社
    JWDA公開日
    2017年3月30日