#24

木造建築は、他の構造と同等の耐震性能を有しています

    法的に定められている耐震性能レベルは、構造種別に関わらず同じであり、基準に従って建てられた建築物は、木造でも鉄筋コンクリート造や鉄骨造と同等の耐震性能を有しています。

    掲載情報の概要

    法的に見ると、建築基準法で定めている耐震性能レベルは構造種別に関わらず同じです。木造だからと言って、基準法で要求している耐震性能レベルを満たしていないなどということはありません。建て主や設計者が設定する目標性能が同じであれば、地震の耐え方に違いがあるものの、構造種別の違いによる耐震性能レベルの違いはありません。

    建築基準法で定めている耐震性能レベルは、構造種別に関わらず同じです

    法的に見ると、建築基準法で定めている耐震性能レベルは構造種別に関わらず同じです。木造だからと言って、基準法で要求している耐震性能レベルを満たしていないなどということはありません。建て主や設計者が設定する目標性能が同じであれば、地震の耐え方に違いがあるものの、構造種別の違いによる耐震性能レベルの違いはありません。

    建物に作用する地震力は建物の重量に比例します。建物重量は用途や規模によって変わりますが、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の床単位面積当たりの重量比は概ね、木造:鉄骨造:鉄筋コンクリート造=1:2:4になります。                                       したがって、木造は鉄筋コンクリート造の1/4程度に見合う重量を支えればよく、より耐力の低い木造の構造壁であっても、適量で耐震性とプランニングを両立させることが可能であると言えます。

    例えば、壁厚15cmの鉄筋コンクリート造の構造壁と構造用合板を両面張りした木造の構造壁の地震に耐える力を単純に比べれば、鉄筋コンクリート造の構造壁の方が数倍も耐える力は高くなります。しかし大切なのは、木造でも鉄筋コンクリート造でも、建物に作用する地震力に対し必要な構造壁を設計する事です。                                                                                                                                                         

    新耐震以降、大震災時の木造建築の全壊率は他構造と比べて大きくありません

    阪神大震災(兵庫県南部地震)における建築年代の区分ごとの木造、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨(S)造、軽量鉄骨(S)造の被害率を右図に示します。 この図から大震災発生時における最新の耐震基準(1981年新耐震基準)を満たした木造建築の全壊率は、他構造のそれに比べて顕著に劣っていないと言えます。                                                       2016年(平成28年)に発生した熊本地震でも同様の傾向があることが分かっています。

    木造は他の構造に比べて耐震性能を効率よく上げる事が出来ます

    建築基準法の要求レベルを超えた性能、例えば、官庁施設の総合耐震計画基準におけるⅠ・Ⅱ類、住宅品確法における耐震等級2・3を目標性能とした設計を行う場合、構造種別によって性能を上げるための方法やコストには、以下のような違いがあります。

    鉄筋コンクリート造では、柱梁の断面や鉄筋、構造壁の壁厚や壁量等、構造体量の直接的な増大が必要になり、コストアップにつながりやすい傾向があります。特に、鉄筋コンクリート造は建物重量に占める構造体の割合が大きいため、部材が大きくなると支えるべき建物重量も増えてしまう傾向にあり、耐震性能を上げにくくなる場合があります。

    鉄骨造は、ラーメン構造でもブレース構造でも部材断面を大きくすることで耐震性能を向上できますが、鋼材量の増大がそのまま躯体コストのアップにつながりやすい傾向があります。

    木造は、一般的には構造壁と屋根・床構面の耐力強化と壁長の増大で対応しますが、建物重量に占める構造体の割合が小さいため、効率よく耐震性能を上げやすい事に加え、耐震性能向上のための様々な手法があります。 例えば、面材に厚物構造用合板を使い釘の径と本数をふやして耐力壁と水平構面の性能を高める事で、壁長を増やさずに耐震性能向上を実現する事ができます。

    このような多様な対処法を選択できる木造は、他の構造に比べて、耐震性能向上に係るコスト優位性の高い構造であると言えます。

    木造は既存建物の耐震性能を高めるための工事を比較的楽に行えます

    木造における耐震性能の高めやすさは、既存建物の改修や増築における木造の有効性に繋がります。木造では既存建物の劣化部分の補修や交換が比較的容易であり、多様な方法により地震に耐える力を高くすることが出来、例えば耐力壁の仕様変更程度でも効果があります。                         ただし、木造でも基礎だけは鉄筋コンクリート造で作られていますので、基礎の劣化や耐力不足が著しい場合は補強工事が大掛かりになります。                                          一方、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の既存建物の改修では大掛かりな補強設計や工事が必要になる場合が多くあり、コンクリートや鋼材等の構造材自体の劣化が著しい場合は、改修自体が困難な場合もあります。           

    住宅品確法が示している耐震性能レベル

    建築基準法よりも高い耐震性能の指標となる基準に住宅品確法の「住宅性能表示」における基準があります。住宅性能表示における耐震性能レベルについては、下表のように木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの構造種別に関係なく、3段階の耐震等級が定められています。

    木造でも耐震等級3を確保すれば、災害発生時に避難所となる学校や消防署といった重要施設に要求される耐震性能と同等の性能を持たせることが出来ます。

              

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    林野庁 科学的データによる木材・木造建築物のQ&A https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf
    論文元/参考文献2
    「自治体の被害調査結果に基づく兵庫県南部地震の建物被害関数」,村尾修,山崎文雄, 日本建築学会構造系論文集,65(527),189-196(2000) https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/65/527/65_KJ00004087706/_article/-char/ja/
    JWDA公開日
    2017年3月30日
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